blog-chronicle〈ブロニクル〉

あちこちのブログ、HPに書きちらかしたエントリを一本化。

『おっぱいバレー』

 「試合に勝ったらおっぱいをみせてあげる」

 部活の担当教師(綾瀬はるか)とこんな約束をした弱小バレーボール部の男子中学生たちがおっぱいを見ようと奮闘する話…。

 いかにもバカバカしそうなメインストーリーとタイトルで「見ず嫌い」を起こしている方も多そうですが、なかなかどうして、たんなるバカ映画ではなく、わりとしっとりした作りの映画です。70年代末の北九州の地方都市を舞台にしているせいかもしれません。

 白い煙を吐く煙突が並ぶ海沿いの工業地帯。港町を眼下に見降ろす急な坂道などロケーションのよさもこの映画のウリのひとつです。中学生たちがたむろする、廃車のトラックが放置された倉庫街とか、もう絵になりすぎ。先生たちが仕事のあとに立ち寄る食堂や一杯飲み屋(?)も当時の空気感をよく出してます。

 バレーボール部の部室がある建物のボロさ加減もリアルでいいですね。部員たちの練習シーンはこの校舎の裏手みたいな部室まわりが中心で、きっと「引きの絵」で校庭全体を入れようとすると、いろいろ最近のものが映り込んでしまうので仕方なくそうせざるをえなかったのでしょう。「弱小クラブなので校庭や体育館を使わせてもらえない」という説明もあってさほどのキズではありません。

 こういう「近過去」を舞台にした映画は、観てる側の「そうだよねー、あったよねー」という共感を引こうとするためか、本筋と直接関係ない懐かしネタに頼りすぎてしまう傾向があって、個人的にあまりそういうのは好きじゃないんですが(もちろんノスタルジックを堂々と前面に出した作品もOK)、この映画はなんとかギリギリ自分的には許せる範囲で、部室に当時のアイドルの写真が貼りつけてあったり、また全編にそのころ流行したニューミュージック(Jポップではない)が使用されたりしているのですが、まあ主人公が厨房ということでそれらも違和感ない感じです。

 昔が舞台の作品では出演者の外見がどうもイマ風で、その時代の人には失礼ですが、どうも当時の雰囲気とそぐわなかったりする場合が多かったりします。この作品でも主人公たちが五分刈りのボウズ頭だったりすると、当時の地方の空気がもっとよく出ていたかもしれませんね。

 ま、ひとつ違和感があるとすれば、あの頃の厨房があんなに天心らんまんに「おっぱいおっぱい」と叫んだりするなど、セックスに対してオープンな雰囲気だったろうかと疑問にも思うのですが、実話をもとにしたストーリーだというので、まあそんなこともあったのでしょうね。

 映画にも出てきますが、そのころ深夜には「11PM」という伝説のアダルト番組があって、これを親に隠れて見るのが、当時性に目覚めたガキにとっては大冒険であった。

 番組の内容じたいはそれほどたいしたことなかったんだけど。いまの深夜帯の番組が全世代に開かれてるのと比較すると、時代は変わったなと感慨ひとしおです。

 あの頃はこのように大人と子どもの世界のあいだにはっきりした線引きがあったように思います。よくも悪くも。

 たんなるノスタルジーで終わらず、こういう世代感覚をきっちりオサえることもけっこう重要だと思います。「おっぱいバレー」…タイトルでバカにして見始めると意外に拾いものの一作でした。