読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

re-union

あちこちのブログ、HPに書きちらかしたエントリを一本化。

『かぞくのくに』

25年ぶりに北朝鮮から一時帰国した兄ソンホを迎える妹リエと両親。兄は病気の治療が目的で3ヵ月で故国へ戻らなければならず、日本での彼の行動をチェックする監視人の姿も背後に見え隠れします。

 祖国の内情をあらわにできない兄は、家族や久しぶりに再会した友人たちの前でも自然と無口になりうまく心を開けない。対照的に自由で快活な妹や一途に息子の身を思う母の温かさ、二つの国家のあいだで息子以上の重みを背負う父の厳しさは、国の違いを抜きに普遍的な家族の姿のように思えます。それぞれの事情を抱えた家族が囲む食卓は、静かだが幸福感に満ちあふれています。

 一方、めったに感情を外に出さない北朝鮮の監視人はそのまま生まれ育った祖国を象徴するようです。この作品はそれほど政治的問題を前面に押し出してはいませんが、監視人が出されたコーヒーにたっぷりと砂糖やミルクを注ぐシーンなどにかの国の事情が垣間見えます。

 住む場所が違っても家族が互いを思いやる気持ちは同じ、そんなことを感じさせる作品です。最後に兄が妹へ送ったメッセージは、監督ヤン・ヨンヒの実体験からきているようです。

 けして派手ではありませんが、登場人物一人一人にそっと寄り添い、じっくりと見守るような息づかいが感じられる映画でした。

キネマ旬報日本映画ベストワン&読売文学賞シナリオ・脚本賞受賞おめでとうございます。