『舟を編む』
「辞書の編集」っていういかにも地味~なテーマで、ふつうに映画化したらかなり地味な仕上がりになるのではという心配がありましたが、結果としてそのとおりの印象の作品でした。
う~ん、やっぱり思ったとおりのよくある「お仕事もの」の域を出なかったというか・・・。業界固有の内部事情を紹介しながら、主人公の私生活や恋愛、成長の過程をからめてっていう・・・なんだか内容が予想できすぎで、実際に観てみるとまさにそのとおり。本作の場合は業界のウラ事情に昔ながらの共同アパートといった昭和レトロ感を加味して「滅びゆく活字文化」の哀歓を謳い上げた、みたいな。
一冊の辞書が完成するまでには10年近い年月がかかるのだそうです。
10年単位でひとつのプロジェクトを進めていくというのは、僕みたいな毎年のように転職を繰り返している人間にとってはまるでリアリティのない別世界の出来事であって、だからこそそういう十年一日のような世界に暮らす人たちの心情? みたいなものに興味はありましたが、そのへんがうまく描けていたかどうか・・・。2時間あまりの上映時間でそれを要求するのが酷なのかもしれませんが。
松田龍平演じる主人公が新人として職場に配属されてからおよそ10年。主任としてプロジェクトの先頭に立つまでには公私ともに実にいろいろあったはず。そのへんの時の流れみたいなものが登場人物たちからあまり伝わってこなかった。眼鏡や髪型が多少変わったりはしてますが、それぐらいじゃちょっとキビしいかも・・・。
それにしても原作はどうなってるのか知らないが、一気に10年近く時間が飛ぶのはいくらなんでもちと乱暴すぎやしないかい? 後半、辞書が完成に近づいていくプロセスはやや駆け足気味な感も。
これも原作どおりかもしれませんが、主人公が最初から古書の虫みたいな、まさに辞書編集にうってつけのキャラ設定で、そのマッチングのよさがご都合主義っぽくも感じてしまいました。こんなぴったりの人材見つかるわけないじゃん、だったらはじめから辞書編集行けよみたいな。
宮崎あおいの存在が薄かったなー。彼女が出るというので観に行った客はがっかりしたことでしょう。俺なんか始まって30分以上待ち続けたもんね。まだかまだかって。忘れた頃になって途中合流みたいな感じでやっと出てきた。これで準主役かい? 彼女の職業や主人公との夫婦生活も描写不足のせいかあまりリアリティが感じられませんでした。
時代の変化をストーリーに反映させ、辞書がようやく完成を迎えたときはウェブ版になってしまってたみたいなオチも期待しましたが、それじゃ身もフタもないか。
今回は若干キビしい感想になりましたが、あくまで僕自分の趣味に合わなかったというだけで作品自体を否定するつもりはありませんのでごカンベンを・・・。