『グラス★ホッパー』
自分の住む土地に魅力を感じられない。不便で娯楽も少なく、都会と較べたら退屈な場所。
そう思いながら日々を暮らす人々が、日本じゅうの小さな町に大勢いるのではないでしょうか。かくいう僕もその一人かもしれませんけど。
このところ増えつつある、地方を舞台に地元の人々の協力のもと作られたご当地映画は、そんな僕たちの声なき声に対するひとつの回答になっているように思います。
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『グラス★ホッパー』は、群馬県太田市や大泉町周辺を舞台設定とし、そこで暮らす子どもたちを中心に描いた作品です。
この地域はラグビー熱が盛んなほか、地元アイドルユニットなども精力的に活動しているということです。映画はこの二つの要素を上手にからませ、単なるご当地紹介ムービーにとどまらない豊かなストーリーの作品となっています。
小学6年の女の子を主人公に、その両親や弟、学校の友人、少年ラグビーチームやアイドル3人組など多彩な登場人物が群像劇を繰り広げます。各々のエピソードで十分、一篇のドラマが生まれそうです。
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地方発映画の特色のひとつでもありますが、『グラス★ホッパー』も出演者のほとんどが現実に地域で生活している人々であり、とくに子どもたちは大半が演技未経験者です。
何の変哲もない郊外のどこにでもある風景をバックに、飾り気のない演技を披露するキャストの面々は、まるで僕らの身近にいる知り合いのように見えてきます。
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東京がもっとも「エラかった」時代はとっくに過ぎたと思いますが、地方にはいまだに「夢破れて帰る場所」というネガティブな印象がつきまとているかもしれません。
『グラス★ホッパー』でもかつて一流ラガーだった輝かしい過去を持ちながら、いまは生きる気力をなくしたように見える主人公の父親にそのイメージが背負わされているように見えます。
だけど見方を変えてみればそのマイナスイメージは、「ふるさと=帰ってこれる場所」とプラスに反転できないこともないのでは。根無し草のように東京周辺を転々としながら過ごす一生とどちらが価値があるでしょう。
『グラス★ホッパー』を観賞しながら、自分はいま置かれている状況のもとでどう生きればいいか、あらためて見つめ直さなければという気持ちにさせられました。
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映画の内容とは直接関係ありませんが、いちばん最後に流れるテロップには、エキストラ出演した町の人々の名前があとからあとから、エンドレスではないかと思うほどに続き、ちょっと壮観です。『スターウォーズ』のファーストシーンで画面の手前から奥へ飛んでいく巨大宇宙船の、果てしなく延々と続く機体を連想してしまいました。『グラス★ホッパー』が多くの人の協力で生まれたことを、無言で流れていく字幕が何よりも雄弁に物語っているように感じました。