『スラムドッグ$ミリオネア』
問題:私が『スラムドッグ$ミリオネア』を見た理由
A:映画マニアだった。 B:上映していたのが近所の映画館だった。
C:入場料が格安だった。D:たんにヒマだった。
ファイナルアンサー!!!!!!
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・・・あの有名クイズ番組の元ネタはどうやら外国の番組だったらしい。本作に出てくるインド版「ミリオネア」の司会者のいやらしさは日本以上。いや別に「みのも●た」がいやらしいと言ってるわけじゃありませんが。
『スラムドッグ$ミリオネア』では、クイズの挑戦者は社会の底辺に位置するアルバイター青年。驚異の正解率に八百長を疑われ、警察へ連行されて拷問と訊問を受ける運命に。ああ、ついてない。
映画の前半部は主人公の子供時代とクイズ番組の本番と警察での取調べと、時系列が行きつ戻りつし、うちのおかんなら混乱するかも。
ここで紹介される主人公の負け犬人生はハンパない。はじめはトイレのつぼに飛び込む程度たっだが、成長するにつれて母との死別や犯罪組織の仲間入り、あげくの果てに仄かな恋心を抱く幼馴染みとも引き裂かれ、雪だるま式に過酷さを増していく。まるでクイズの難易度や賞金額アップと足並みをそろえるように。
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幼馴染みだったヒロインは美しい娘に成長し(余談だが元AKBのあっちゃんに似ている)主人公と再会する。
彼女が金ぴかの衣装で踊るシーンに、かつて地元の公民かで見たカンボジアの民族舞踊イベントを思い出した。きらびやかな衣装を身に着けて舞い踊る少女や民族楽器を演奏する少年たち。彼らはさまざまな事情で孤児院で暮らす10代半ばの子供たちだという。
完成度の高い芸の背景には、おそらく国家レベルの貧困とそこから抜け出そうとする血のにじむような努力があるのだろう。あの子たちが故国で送るであろう現実の厳しさが華麗な舞台の裏に見え隠れしていた。あるいは芸事に秀で、その能力で異国まで来れるだけ恵まれているのかもしれないけど・・・
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中国につづきこれからの成長が見込まれているインド。映画の舞台となるムンバイは高層ビル建設ラッシュの真っ最中だ。
新しく都市が発展していくなかで犯罪や貧困にまみれた都市の恥部としてのスラムも生成する。
林立するビルの足元を埋め尽くすようなバラックの群れ、ゴミの山。そこで生活する人々はエネルギッシュだ。
彼らはクイズに正解してミリオネアになれるような、一発逆転のサクセスストーリーを信じることができるのだろう。盛りの季節を過ぎて衰退に向かういまの日本にはないものかもしれない。
主人公をミリオネアに導いたのは、それまでの負け犬としての過酷な人生だった。過酷な運命にも意味があるのだと信じたい。
エンディング、路上で人々が群舞するシーンから急成長のさなかにあるインドのバイタリティが伝わってくるようだった。