blog-chronicle〈ブロニクル〉

あちこちのブログ、HPに書きちらかしたエントリを一本化。

試されるとき。

 去年の終わりごろ、世の中を騒がした大事件を再現VTRで振り返る『報道スクープSP』という番組をやっていた。 

 最近このての再現ドラマもけっこうレベルが高くなってる気がする。ちょっとした映画並みだ。 

 今回見た中では大阪で起きた三菱銀行立てこもり事件や機長が刺殺されたハイジャック事件、ペルーの日本大使公邸占拠事件などが印象的だった。 

 当時はただ、ひどい事件だなーぐらいにしか考えていなかったが、再現ドラマを見てあらためて「自分がもしもあの場所にいたら、どんな行動をとっただろう」みたいなことを身につまされて考えてしまった。 

 いつもと変わらない平凡な日常から、いきなり凶悪犯罪に巻き込まれる。そんなとき、人はどんな行動をとるのか。 

 大げさに言えばその瞬間、その人は「試されている」のだと思う。 

 何を試されているのか————自分でもうまく言えないけど強いて言うなら、その人の持つ勇気や決断力、これまで生きてきた人生の知恵や経験、そういったものをすべて含めたその人の全人格が。 

 生きるか死ぬかの瀬戸際、お前はどう動く? 

 いきなり現われた運命の神は(そんなものがいるとしたらだが)そう彼らに問いかけたのではないだろうか。 

 同じようなことは、ずいぶん前に村上春樹の『アンダーグラウンド』を読んだ時も思った。 

 地下鉄サリン事件の被害者一人ひとりから詳細な聞き書きを行なったこのインタビュー集は、ありふれた日常から突然テロの渦中に投げ込まれた人々が、どう決断し、行動したかを克明に描き出している。 

 平凡な人々が、こんなにも勇敢になれる。こんなにも気高くなれる。 

 長い人生の中で何度か、自分の真価を問われる時がある。その時自分は彼らのようになれるだろうか。 

 三菱銀行で人質になった行員は、犯人に命じられるまま同僚の耳を切り落とした。 

 ハイジャックされた飛行機の乗客たちはネクタイだけを武器に操縦室の犯人に立ち向かった。 

 ペルー公邸の人質はラジオ体操やピアノを教えることでゲリラたちと友情を結ぼうと試みた。 

 そして今年。地下鉄サリン事件からまもなく20年。