blog-chronicle〈ブロニクル〉

あちこちのブログ、HPに書きちらかしたエントリを一本化。

【BOOK】こんな本を読んだ。<2012-2015>

揶揄するところもない土地にいったい何があるというんですか! ~『東京するめクラブ 地球のはぐれかた』

村上春樹の新刊『ラオスにいったい何があるというんですか』が刊行された。 なんだかラオスの国とそこに住む人々を小馬鹿にしているようなタイトルだ。村上先生は以前も自作の中で北海道の実在する街について多少皮肉めいた描写をして抗議を受けた過去がある…

愛と裏表の憎まれ口か? 小谷野敦『このミステリーがひどい!』(飛鳥新社刊)

これだけたくさんのミステリーを少年期から読み、たんねんにトリックの矛盾や読後感をつらねている著者は、もしかしたら意外とミステリー好きなのではないでしょうか。ジャンルに対する愛情がなければなかなかできることではありません。そんなふうに思わさ…

名文ってなんだ?  斎藤美奈子『文章読本さん江』(ちくま文庫)

とあるライター養成講座に参加して、課題として何冊か文章術について書かれた本を読んだ。 今回取り上げる斎藤美奈子『文章読本さん江』もそのときに読んだ1冊。しかし文章術を書いたというより、文章術について書いた本、いわゆる“文章読本”を比較検討、批…

ひさしぶりのガイブン。 ~アゴタ・クリストフ『悪童日記』(ハヤカワ文庫)

もう半年近く前になるでしょうか。とあるライター養成講座の課題で読みました。なにをいまさらな感じですが記録としてUPしておきます↓ まず、主人公の少年たちをあずかるおばあちゃんのキャラで話に引き込まれる。イメージでいえば長谷川町子のいじわるば…

怒涛の江戸川乱歩リスペクト②~昭和の逢魔が時、子供たちが出会ったものは・・・

「ぼくはきのうの夕がた、おそろしいものを見たんだよ」~少年探偵団シリーズ「灰色の巨人」より 少年探偵団の舞台となったころの東京の街は、たそがれ時を迎えればきっといまよりも暗く、さびしい風景であったろう。 この世のものではない異形の怪人、怪物…

怒涛の江戸川乱歩リスペクト・ごあいさつ

去年から今年にかけては乱歩生誕120年、没後50年という節目の年。現役作家が競作した少年探偵団テーマの短編集も刊行されたりしている。その表紙は昔なつかしいポプラ社の少年探偵団シリーズのテイストだ。 そう、謎と冒険がいっぱいの「少年探偵団」と…

いまはむかし、黄金の日々の夢のあと ~都築響一『バブルの肖像』

今も全国あちらこちらに残るバブル時代の遺物や、胸に刻まれているあのころの出来事を豊富なカラー図版とともに再検証、いったいあの狂乱の時代はなんだったのか考えてみようという趣向の一冊だ(アスペクト刊)。 僕自身、年齢的にはまさにバブルのど真ん中…

喧嘩上等! 汚れた街をゆく孤高の哲学者 ~中島義道『醜い日本の私』

今回のエントリはちょっとビクビクもんで書いてます。誰が見てるか分かったもんじゃないインターネット。著者本人の目に触れる可能性もじゅうぶんにある… それでもどうしてもこの本はご紹介したい。泣く子も黙る怒りの哲学者・中島義道氏の『醜い日本の私』…

「意味」に満ちた世界から逃走し続ける大泥棒 ~桜井晴也『世界泥棒』

河出書房新社より刊行された、第50回文藝賞受賞作です。のっけからナニですが、わたくし近ごろ小説からめっきり遠ざかってしまっておりまして・・・。しかもブンガクとなるとさらに敷居が高くなる一方。えいやッと覚悟をかためて、この改行がほとんどない…

駆け足でたどる都市と郊外の変貌 ~樋口忠彦著『郊外の風景・江戸から東京へ』(江戸東京ライブラリー)

江戸から明治維新、大正末の大震災を経て昭和初期にいたる時期の、郊外がスプロールしていく過程を、文学の古典や当時模索された都市政策の中に追った1冊(教育出版刊)。まずは『江戸東京花暦』から当時の人々の生活を紹介。インターネットもTVもなかった…

ハードボイルドな店長はあなたの街の書店にも…伊達雅彦『傷だらけの店長』

著者はいわゆるプロの文筆家ではない。某チェーン書店の店長をされていた方で、本書(新潮文庫刊)は本業の合間をぬって業界紙に連載したエッセイをまとめたもののようだ。 まず印象に残るのが全編を貫く陰りを帯びた文章のトーンだ。多忙でろくに休みもとれ…

セーシュンは人生の夏休みだ! 〜高島俊男『漱石の夏やすみ』

いやー、終わりましたね夏。子どもの頃は長ーい夏休みが楽しみでしたが、大人になってしまうとせいぜい一週間程度のお盆休みをとるくらい。しかも僕などは殺人的暑さにおそれをなしてほとんどどこへも出かけず、冷房の効いた部屋にこもりっぱなしでした。去…

フューチャリストの夢見た未来に僕らは立っているのか? 〜梅田望夫/茂木健一郎『フューチャリスト宣言』(ちくま新書)

米国シリコンバレーでコンピューター、ネット業界の人々と関わった経験をもとに『ウェブ進化論』などのベストセラーを生んだ梅田望夫氏。かたや「クオリア」という概念を提唱し、脳科学の未知の分野へ挑みつつテレビなどでもおなじみの顔になっている茂木健…

文芸誌? それとも音楽誌? 〜「パピルス」と「月カド」

久しぶりに新刊書店をのぞいたら、幻冬舎が出している「パピルス」が大幅にモデルチェンジしていたのでびっくりした。知らなかったのは僕だけでみなさんとっくにご存知だったのかもしれないが。「ゆず」の二人を特集しているが、判型が普通の文芸誌サイズに…

たまには愛について真剣に考えよう 〜福田恒存『私の恋愛教室』(ちくま文庫)

近頃多いものに幼児虐待があります。「いったい子どもを愛していないのか!」と怒りを感じる方も多いでしょう。いまの世の中狂ってる、と。だけどこれは現代社会の病理なんかじゃない可能性もある。そもそも「親の愛」ってほんとに存在するんだろうか。「愛…

バック・トゥ・ルーツ、全作ツィートするぞ!星新一 〜『かぼちゃの馬車』(新潮文庫)

ツィッター上で「星新一1001夜」という企画? を始めた。氏の1000編を超えるショートショートを一編ずつ要約してツィートしていくという試みだ。 はじめはアラビアンナイトにならい、毎晩一編ずつ上げていく予定だったがズボラな性格のため不定期ツ…

ただのノスタルジーじゃあらへんで! 〜重松清『あの歌がきこえる』(新潮文庫)

70年代末から80年代初頭にかけて、本州の西のはじの小さな町で成長していく少年たちを主人公にした連作長篇です。中心となるシュウ、ヤスオ、コウジの友情はもちろん、親や教師との確執、ほのかな恋心、そしてこの時期の少年たちには最大の過大かもしれ…

WEB上のバカや暇人はいまも順調に退化中? 〜中川淳一郎『今、ウェブは退化中ですが、何か?』(講談社)

ニコラス・G・カー『ネット・バカ』に続き、またもインターネット批判本を読む。『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)が話題をよんだ著者の、その続編ともいえる本。前述の「ネット・バカ」といい、どれもみなネット信奉者の神経を実に上手に逆撫です…

新しいメディア、さあどうする…30年前みんなが頭を悩ませた 〜中本正勝他編著『情報で町づくり』

図書館で地域活性に関する本を探していたらまさにぴったりのタイトルの本が見つかり、借りてきて読んでみたら80年代後半に出版された本でした。30年近く前かよ・・・。当時の社会のIT化(そのころはマルチメディア化といった)への取り組みの実例が本…

ネットはわたしたちをおバカにしている!? 〜ニコラス・G・カー『ネット・バカ』

本書の著者はパソコン・ネットをその黎明期から使い続けてきた。機械の計算力や記憶能力が進歩していきインターネットが登場、ブログやSNSなどさまざまなサービスの開始などをリアルタイムで経験した世代だ。PCの進化をたどりながら、著者のなかでは納得のい…

弱者は社会が崩壊する夢をみる… ~赤木智弘『若者を見殺しにする国』

インターネット出身、社会批評に携わる著者は富裕層、貧困層の二極化が進む一方の「平和」な社会に異議を唱え戦争によってもう一度世の中がリセットされることを待望する。いまの世の中では自分たち弱者は生活の向上など望めず、人間としての尊厳も奪われ、…

これってまるで自分のこと…?~ ドナ・ウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』

一読して「ああ、まさにこの人の症状って自分とおんなじ。やっぱりオレって自閉症だったんだ!」と、おのれの運命を嘆いた私でしたが、似たような感想を抱いた人はきっと少なくないことでしょう。だからこそ本書が話題を呼びベストセラーとなったのでしょう…

トレンドは繰り返す、過去に学べ!~菅原健二『流行ノ法則』

たとえば現在に生きる僕らの目から見た明治や江戸時代と、当時暮らしていた人々が考えるその時代とでは当然ズレがあるわけで、同時代の視点でなされた時代観察、あるいは分析は少し距離をおいて客観的に見たのとはまた違う印象になるだろう。とくにメンタル…

一度住むと抜け出せなくなる呪われた沿線?~三善里沙子『中央線の呪い』

東京下町から北関東にかけてをウロウロしながら人生の大部分を過ごしてきてきた自分にとり、東京の西側というのはどこか縁遠い土地だった。 高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、吉祥寺といったカルトな街が並ぶ中央線沿線。古本、古着、雑貨などこだわりの店が集まり、…

この親にしてこの子あり…?~ブルース・オズボーン『OYAKO』

この親にしてこの子あり…?~ブルース・オズボーン『OYAKO』 この写真集に収められているのは、有名人、一般人を問わずたくさんの親子を写したモノクロ写真の数々。 はじめはパンクロッカーとその母親という意外性を狙ったところからスタートした企画だ…

あらゆる場所に猫たちが…猫好き必見の写真集~荒木経惟『東京猫町』

『東京日和』、杉浦日向子とコラボした『東京観音』など、アラーキー氏には東京を題材にした作品集がいくつもあるが、 なかでもこれは「猫」がテーマ。 一見ふつうに街並みを撮った何の変哲もない写真のように見えるが、 よーく見るとどの写真にもワンポイン…

死ぬまでロケンロール!とロッカーたちは言うけれど。~西田浩『ロックと共に年をとる』

若者音楽の代表選手だったロックも、1950年代の誕生からかるく半世紀。 ニューリリースされたCDを買ったりコンサートに出かける50,60代が普通にいて、もはや若者のための音楽とは言えなくなってるわけです。 昔のオトナたちはロックなんか若いう…

ブンガクの神は人の上に人をつくらず ~原田宗典『おまえは世界の王様か!』

初回はやはり書評本を。書評というよりも著者が無名時代に書いた読書感想メモを原文そのまま掲載した大胆な一冊だ。 とにかく辛口コメントのてんこ盛り。 なんせ著者がまだ文筆家ですらなかったときの、一般公開を想定せずに書かれたもの。なので古今東西の…

ごあいさつ。

本好きのためのサイト『本のある時間』に、読書について書いた文をUPしていましたが、 去年末にその投稿コーナーが終了してしまいました(サイト自体は存続http://www.timewithbooks.com/)。 以後、本に関しては個人ブログでもほとんど書いていなかったの…