blog-chronicle〈ブロニクル〉

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ブンガクの神は人の上に人をつくらず ~原田宗典『おまえは世界の王様か!』

初回はやはり書評本を。書評というよりも著者が無名時代に書いた読書感想メモを原文そのまま掲載した大胆な一冊だ。

 

とにかく辛口コメントのてんこ盛り。

なんせ著者がまだ文筆家ですらなかったときの、一般公開を想定せずに書かれたもの。なので古今東西の名作も

 

 

~「三島由紀夫『近代能楽集』、駄作だ。最悪の出来だ」

 

~「安部公房『飢餓同盟』、脇役的登場人物が類型的になってしまっている気がする」

 

 

と、一読者の目線でバッタバッタと斬って捨てられている。まさに読者は王様、あんたが大将。

 

功なり名を遂げた現在の著者では、こんなビッグマウスはとても許されないでしょう。

たとえ相手が大作家という権威的存在であろうと互角の立場で対峙し、それがどーした的に一蹴する向こう見ずさは若さのたまものです。

 

きっと若き原田氏には、文学に対する100パーセントの信頼があったのでしょう。

プラトンの真・善・美というイデーのように、この世界の一段階上層には文学の神のような普遍的存在がおいでになり、その神は評価の定まった文豪だろうがまだ何者でもない一青年だろうが、ブンガクの名のもとに平等に扱ってくれるはずだ、という…。

 

いまとなってはすべて若気の至りと原田氏は当時の自分を振り返り、しきりに恐縮してみせていますが、過去の姿をストレートに晒してしまう勇気には打たれます。

 

実は私もWEB上の某読書記録サービスに、これまで読破した本と読後感想のメモ三十ウン年分をヒマを見てコツコツ打ち込んでおります。

 

中学生だった頃の自分の記述は当然非常につたないもの。このコメント部分の扱いをどうするか少し悩みましたが、すべて当時のままUPすることにしました。これはあくまでその時点での感想で、絶対的評価ではないのだからと…。

 

そうはいっても多くの目に触れる可能性のあるWEB上にUPするのは、原田氏と同じぐらいの勇気がいる。

『お前は世界の王様か!』はそんな私の背中を押してくれたと言えるでしょう。

 

ひとつ気がかりなのは、私の中学時代の読書コメントをネット上で見た誰かが

「こいつの読みは浅い!」とか思ったらどうしようということで、

 

「いえ、なにぶんこれは自分が厨房だった頃の文章なので」と弁解するしかありませんね。ま、いまだに中二病みたいなものですけど…。

 

 

 

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