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I.D.C.D.09 J.ガイルズ・バンド『フリーズ・フレイム』 -sio_note-

テーマ▶音楽

 久しぶりに帰ってきました――。

 ”だいたい”自分の音楽歴に沿って、深い影響を受けたアルバムを紹介していくI.D.C.D。このたびマガジン化してトップ画像もつけました。

 復帰第1弾は、泥臭いブルース風味のR&Rで70年代には「アメリカのストーンズ」と異名も受けていたJ.ガイルズ・バンドです。

 ギターのJ.ガイルズをリーダーに、DJ出身のボーカリストピーター・ウルフ、そのむかしFENで、番組終わりのテーマ曲「ワマー・ジャマー」で小粋なブルースハープを聞かせてくれたマジック・ディックなどのスター・プレイヤーが揃ったこのバンド、1981年に発表した本作『フリーズ・フレイム』が最大のヒットとなりました

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【曲紹介】

1. Freeze-Frame
2. Rage In The Cage
 (閉ざされた怒り)
3. Centerfold (堕ちた天使)
4. Do You Remember When (去って行く女)
5. Insane, Insane Again (狂気の季節)
6. Flamethrower (炎の女)
7. River Blindness
8. Angel In Blue
 (悲しみのエンジェル)
9. Piss On The Wall

 ……それぞれ思わせぶりな邦題がついてますね。

 初めてこのアルバムを聴いたときは、正直いってちょっと親しみにくい印象でした。

 J.ガイルズといえばストレートで泥臭いロックバンドというイメージだったので、本作のキーボードを多用した人工的なサウンドに思いっきり意表を突かれたのです。

 当時のニュー・ウェーブやなんたらの流れに乗ったんでしょうが、かなりトンガった音づくりで、まるでメンバー全員、薄汚れたジーンズからキラキラのデザイナー・スーツに衣替えしてきたような違和感がありました。

 まあ何度か聴いてるうちに、少しづつよさがわかってきたんですが。もうアルバムのジャケットからして、モダンアートというか近代美術館というか(笑)。最先端いくぞ! みたいな感じですからね。

 とはいえ、しっかり大衆向けの売れセンも仕込んであって、それが大ヒットした3曲目「センターフォールド(堕ちた天使)」です。

 のちに日本のコマーシャルがさんざんこのイントロを使用したので、J.ガイルズ・バンドを知らないみなさんも、耳に馴染みがあるのではと思います。思わず一緒に♪ラ~ラ~ララララ~~と合唱してしまいたくなりますね。

 内容のほうはちょっとシビアで、むかしクラスのアイドルだった女の子がヌード雑誌のグラビアに出てるのを見つけちまった、みたいな情けないオトコごころを歌ってるのですが、

 これがピーター・ウルフにかかると、そんなの笑い飛ばせとばかりに、ラ~ラ~ララララ~~に合わせて、歌うというより饒舌にまくしたてています。さすがは元DJです。

 PVでも教室の机に飛び乗って女生徒の前で踊りまくる姿がキマってました。もしかしたらピーター・ウルフ、このビデオでは女子高の高校教師といった役どころだったのかも。

 さらにさらに、この1曲のためにこのアルバムがどうしても嫌いになれません。8曲目「エンジェル・イン・ブルー(悲しみのエンジェル)」です。トンガリまくってみせながら、こんな甘くほろ苦いバラードもこのバンドの得意とするところなのです。

 もともとR&B風味のきいたストレートなロックをやってたJ.ガイルズ・バンド。本作でこんなにも大胆にイメチェンしてしまったのは、途中から加入したキーボード奏者のセス・ジャストマンの影響が大きいといわれています。

 やはり方向性が違っていたのでしょう、このあとボーカルのピーター・ウルフはソロ活動に転向し、『フリーズ・フレイム』の次に発表されたアルバム『ヒップ・アート』には顔をだしていません。

 バンドじたいも活動を休止してしまいます。その後何度か再結成ツアーもやったようですが、リーダーのJ.ガイルズはけして仲間に加わらず「勝手にオレの名を使うな!」と激怒していたそうです。そしてつい2,3年前に死去――。70年代、人気を博したバンドにしてはちょっと寂しいエンディングでした。

 「堕ちた天使」の大ヒットと、音楽性を見失っての低迷――。J.ガイルズ・バンドは80年代、ロック産業化の光と影を背負わされた悲劇のバンドだったのではないでしょうか。

 批判めいた文章のようですが、けしてそんなことはありません。バンドの持つ攻撃性や荒々しさが最新の(当時ね)デジタルサウンドでさらに強化され、隠し味のように王道のバラード「エンジェル・イン・ブルー」でほろりとさせる、『フリーズ・フレイム』は大推薦の傑作です。