時代をまたぐ旅。
新しい時代は、旅先で迎えた。
平成の最後の日に家を出て一泊、令和の初日に帰るという、ふたつの時代をまたぐ旅だ。
行先も泊まる場所も決めずに出発し、途中昼めしを食べながらネットで検索、出てきた宿の空き状況を聞く。泊まるかどうか確約はできないので予約はせずに向かい、近くまで来て電話で申し込む。
高速道路も混んでるのではないかと一般道で山奥を走行。ところが山の中でまさかのがけ崩れによる通行止。ここから高速に乗るにはとんでもない大回りだ。
近くにあった道の駅の観光案内所で聞いてみたら、少し奥にある林道を進めば崩落した場所を迂回できるという。
り、りんどう……
僕が少しビビると「じゅうぶん車で通れますよ」とこともなげに案内所の女性。
実際に走ってみると、舗装はされていたものの幅がせまく、けっこうスリリングだった。地元の人にはこのくらい、たいしたことはないのかもしれない。
県境の峠を越える。最高地点のちかくは霧に包まれている。思いもがけず桜やハナミズキが満開だった。
夕方にチェックイン。高原のシャレオツな雰囲気のホテルだ。
あまり深く考えないで最初に検索で出てきた宿に決めてしまったが、そこそこ当たりだったようだ。もしかしたらどこも満杯で駅前の安いビジネスホテルに泊まることになるかと思ってたが。
チェックインして部屋に入りテレビをつけるとちょうど平成天皇の退位の儀式の真っ最中。
時代が変わる瞬間をふだんとちがう場所で目撃するというのもまた妙な感慨があった。
深夜、元号が変わる瞬間をテレビで確認して就寝。渋谷に集まっていた人たちは意外におとなしい感じだった。岐阜県の郡上では夜を徹して踊り続けるらしい。花火が上がっていた。
スマホを自宅に忘れてくるという凡ミスはやらかしてしまったが、そのぶんネットとかにあまり気をとられず、落ち着いた気分で過ごせたようだ。
令和初日の朝。昨日の雨雲は去ったようだ。静かな時代の幕開けだ。