〇〇の手。
首都の中心を円を描くように走っているのは、もちろん、まーるい緑の山手線だが、
東京の西半分にあたる地域、世田谷とかのあたりは「山の手」などと呼ばれている。
そこに住んでいる既婚の女性は「山の手婦人」などと呼ばれて上品で清楚な貴婦人ということになっている。つきあったことないから実際のところは知らないけど。
「山の手」の反対側にあたる東京の東側は長いこと「下町」と呼ばれており、この呼び名にはあまりいいイメージはなかった。「下町情緒」という言葉もあるが、基本ビンボーが抜けないのだ。
そのイメージを払拭するためか、下町をいつの頃からか「川の手」と呼ぶ風潮が生まれた。
これは荒川や隅田川など、川が多いからに他ならない。なんとなく山の手への、むき出しの対抗意識も感じられる。
先日、埼玉から千葉にいたるローカル鈍行電車に乗っていたら、とある吊り広告が目に入った。
それは千葉県船橋にある分譲住宅かなにかの宣伝だった。
この手の広告は「静かな環境」とか「都心まで××分、通勤便利」だとか、やたらその地域の利点をPRしまくるが、
たいてい「静かな環境」というのはまわりに何にもないド田舎を意味するし、都心まで急行で××分とかうたってても、その急行が1時間に1本しかなかったりする。なのでこのての甘い宣伝文句はあまり鵜呑みにできない。
で、その吊り広告だが、船橋のことをさして「丘の手」と呼んでいた。
丘の手、これは新しい。
山に対して川とくれば、これは対抗心が見え見えだが、
「丘」ときたら、けして「山」に正対するワードではない。しかもどちらかといえば「山」に近い。
「ここは山の手に準ずるハイソな地域ですよお客様」とディベロッパーが購入を検討している客にそっと耳打ちするさまが目に見えるようだ。
やられた、丘の手。
くやしいので、僕の澄んでる地元にもなにか「手」のつくキャッチフレーズをつけたくなった。
あいにく埼玉の片田舎なので、いいキャッチフレーズが浮かばない。
高齢者が多いから「孫の手」ってのはどうかしら?