あれから1年・・・
身辺が忙しく活字の本を読む時間がなくなってきた。
図書館で本を借りても期限までとても全部読みきれない。 で、写真集などビジュアル本を借りることにした。 まずはロバート・キャパの写真集『戦争・平和・子どもたち』 キャパといえば戦場の報道写真で有名だが、この写真集は 戦中そして戦間期の子どもたちの姿をとらえた作品で構成されている。 子どもはもちろん背景に写り込んでいる大人の表情も 一瞬で多くのものを物語っていて素晴らしい。 家財道具を抱えた避難民や、空襲警報の発令下、不安そうに空を見上げる市民の横顔など、 報道写真でありながら芸術として鑑賞もできる作品群だと思うのだが 被写体になってる人々は、戦火の中にあってそれどころじゃないだろう。 そういう姿をアートの観点から見てしまうのはどうかなあと かすかなためらいを感じてしまったりするのだが それで思い出したのは、今回アカデミー賞にノミネートされたことで話題になった 東日本大震災の被災地をドキュメントした『津波そして桜』という映画である。 惜しくも受賞は逃がしたが、今後も国内では大きな評判を呼ぶだろう。 テレビでほんの一部見ただけだが、がれきの中に咲くさくらが、 ニュースのVTRと全く違う印象で迫ってくる。 こういってしまっては何だが、非常に美しい映像だ。 もっとフキンシンに行ってしまうと、背景のがれきすら映画のセットのように見えてしまう。 あの凄まじい震災の痕を、こんなに美化してしまっていいのだろうか…? たしかに今回にかぎらず災害現場というものは (非日常という意味で)映像作家の魂を刺激するものかもしれない。 だが僕らがあの光景を、そんなドラマチックな目で見ることができないのは やはりそれが虚構ではなくて現実に多くの人が傷つき亡くなり、 今も苦しみ続けているのを肌で感じるからだろう。 それをここまでアーティスティックに撮ってしまうことができるのは、 やはり監督が日本人ではなかったからかなと思ったりもするわけで ま、本篇を見たらまた印象が違うかもしれない。映像の美しさだけじゃないのかもしれないが。 震災にドラマや芸術性を持ち込むのはいいことなのか悪いことなのか、どの程度まで許されるのか 自分の中ではまだペンディングなのだが、 もしかしたら被災地の人々は『津波そして桜』にとらえられた桜の美しさを見ることで、 少しでも心の慰めになるとしたら救いになるのかなあ、と思う。 まもなくあれから1年か…。 |