天祢 涼さん。
僕が通っている小説ゼミでは、
毎月一人、作家の方をゲストに迎え、創作についていろいろとお話をうかがっている。
実作者の方から直々にその小説作法を聞くということは、もうその方の手の内をうかがっているようなもので非常に興味深い。
また、同じように文章を書いている人間として、学ぶべきところも多い。
今回のゼミでは、メフィスト賞受賞作家の天祢涼氏においでいただいた。
講談社のメフィスト賞といえば、主流ミステリとは毛色がちがう、ややクセのある(?)作品を輩出することで有名。あの森博嗣氏も『すべてはFになる』で受賞・デビューしている。
失礼ながらこれまで天祢氏の作品を読んだことがなかったので、大急ぎで氏のデビュー作でありメフィスト賞を受賞した『キョウカンカク』を読んだ。
音が色彩になって見える能力を持つ女子高生探偵が猟奇殺人の謎を解き明かす、従来のミステリとはややタッチの異なる作品だ。現実離れした設定や登場人物たちの軽妙なやりとりがライトノベル・タッチでもある。
当日お越しいただいた天祢氏は、デビュー前後の新人賞に投稿しまくっていた時期の話からはじまり、執筆方法、メモをとることや取材、参考資料を集めることの大切さなどを、非常にていねいに語ってくださった。
そして、いままでどこにも公開したことがないという創作のためのプロットや登場人物のプロフィール表まで特別に見せていただいた。まさにハハーッツと土下座したくなるようなありがたさだ。
ゼミに来る作家の方々の話を聞いて思うのは、プロの方もアマチュアと同じように、いやそれ以上に苦しんで創作を続けていること、そして創作のための努力は僕らアマチュアの域をはるかに越えていて、そこがプロであり続けられるゆえんなのだな、と毎回痛感する。
天祢涼氏の最新作は少年少女の貧困問題を描いた『希望が死んだ夜に』。これまでのライトノベル風ミステリーとちがって「地に足の着いた」(本人談)、作品だそうだ。
さっそく購入してみた。ページを開くのが楽しみだ。