永眠。
三国連太郎氏が亡くなった。
添乗員をしていた頃は、ツアー帰りのバスの中で毎回のように「釣りバカ日誌」のビデオを見ていたので、なんだか自分の身近な人が亡くなってしまったようだ。
ワイドショーなどで今回はじめて息子・佐藤浩市との生前の確執を知ったが、そんなエピソードも他人事のような気がしなかった。
いや、べつにうちのオヤジが僕やおふくろを捨ててよその女のとこへ逃げたわけじゃありませんけど。
三国氏死去のニュースの翌日、仕事で移動の途中、とあるリサイクルショップを見つけ、時間に余裕もあったので少しのぞいてみた。
店内はリサイクルというよりは古道具屋という感じで、
広い倉庫みたいなスペースには廃品回収で集められたような古い家財道具がほとんど整理もされないまま、雑然と積み上げられている。
奥のほうの片隅に、額に入った50センチ四方ほどの絵が何点か立てかけてあった。
なかに一枚、年老いた白髪の女性が目を閉じ、横たわっている横顔を描い作品がある。ほとんど色彩も使わず、素描に近い感じの絵だ。
傍らにそっけなく添えられた画題は「永眠」。
思わず、絵の中の老女の顔をしげしげと見入ってしまった。
長年連れ添った奥さんなのか、苦労して育ててくれた母親なのか・・・。
画題がなければ、ただの寝顔なのかと思ってしまうような穏やかな表情だ。
今生の別れに故人の姿を写真に納めておくというのは聞いたことがある。
シャッターを押すだけなら一瞬で済んでしまう。しかし一点の絵に仕上げるとなると、ある程度の時間と気持ちの集中が必要だ。
この絵を描いた人はどんな思いで、死者の顔を見つめながら筆を執り続けたのだろう。
深い思いが伝わってくるような1枚だった。
なんでリサイクルに出しちゃったんだろうなー。そのへんの事情もいろいろと想像させられてしまった。