経験してみるのが一番?
ずいぶん前のことだが、小説家を志望する女の子と話をしていて
どういうわけか電車の「単線」の話題になったのだが
その子は都会育ちのせいか単線というものを知らず
そこで懇切ていねいに「単線」について教えてあげた。
「あのねー単線というのはねー、1本の線路を上りと下りの電車が共有してて、駅ですれ違うようになってるんだよ。だからこっちのホームにとっくに電車が着いてて発車時刻を過ぎていても、反対側の電車が来なけりゃ出発できないんだよ」
女の子は「ふうーん」と分かったような分からないようなピンとこない表情であった。
たとえばもし彼女が、単線が通ってるようなド田舎を舞台にした小説を書こうとしたときに
反対電車とすれ違いのため延々と待たされるミジメな気分とか、腹立たしさとかは
文中でなかなか表現できないかもしれない。
自分が実際に体験してないと理解できないものは、確実にある。
しかし人が一生のあいだに経験できるのは、限られたほんのわずかなことだけだ。
それを考えると、人を殺したこともないのに次々と殺人事件を書き続けるミステリ作家とか
宇宙旅行や未来の話をリアルに描き出せるSF小説家などは、まさに尊敬モノだ。
偉大なり、想像力。
ま、なかにはリアルじゃない小説もいっぱいあるけど(笑)。