マネー・チェンジズ・エブリシング。
某ディスカウントストアでバイトを始め、半年以上になる。
この店には実にさまざま商品が置いてある。衣類から食品、日用品、雑貨…。はっきりいって「誰がこんなもの買うんだ?」と思うようなものもあるが。
広いフロアは多種多様な商品であふれ、まるで巨大な迷路。
高い壁みたいな棚にはさまれた狭い通路をウロウロさまよっていると、
あらゆる商品が、私を買ってくださいと口々にささやきかけてくるようだ。
ウチの親父はこういう店に来ると、あまりの品物の多さにやや茫然自失してしまうのか、苦々しげによくつぶやいたものだ。
「金さえ出せばなんでも手に入るな」
倹約が美徳と教え込まれた昔の人間に
欲望全開の熱に浮かされたような店内は、やや違和感があったのだろう。
まったくそのとおりだ。金さえ出せばなんでも手に入る。
だけどここでバイトをしてる僕に、好きなものを自由の欲しいだけ買う金はない。
仕事を続けていくうち、はなやかな店の中でしだいにサメて無感動な気分になっていく。どうせ手に入るわけがない…と。
こんな自分にはいま大金を与えられても、きっと心から欲しいものなんか思いつかないにちがいない。お金より時間が欲しいぐらいだ。
広間、あちこち取材先をまわり、夕方バイト先へ向かう。
途中ペットショップの前を通りかかる。ウィンドーには貼り紙がされている。ミニダックスフンド、ウン万円、トイプードル、ウン万円…。
オヤジの捨て科白が心の中をよぎる。
「金さえあればなんでも手に入る」そう、命さえも。