「ビッグ・イシュー」を買ってみた。
「ビッグ・イシュー」(BIG ISSUE)という雑誌の存在は、前々から知っていた。
まあホームレスの方々が売っている雑誌という程度の認識しかなかったのだが
こないだ用があって、ちょっとにぎやかな駅で降りたとき、
目撃してしまったんですね。ビッグ・イシューが売られている現場を。
JRと私鉄の連絡口に立ち、行き過ぎる人の流れに向かっておじさんが
「ビッグ・イシュー最新号でーす」とさかんに連呼していた。
少しためらったが、意を決して僕は近づいていき
「どんな雑誌か見ていいですか」と訊くふりをしながら
さりげなくおじさんの観察に入る。
おじさんは60代ぐらいでしょうか。わりとこざっぱりした格好で、
いわゆるホームレスのイメージでは全然ない。
そのへんを歩いてても、まったく違和感ないだろう。
「いつもここで売ってるんですかあ」
ライター業でつちかった(?)取材術を生かし、雑談風を装いながらインタビューを試みる。
おじさんは、ふだんは東京駅の前で商売をやってるのだが、
毎日同じ場所で飽きがきたので、この日はサイタマまで「遠征」に来たという。
気になる収入のシステムだが、雑誌の定価が一冊300円。
これを140円で仕入れるので、一冊売れると160円がおじさんたちの懐に入る。
ただし買い取り制なので売れ残った分は返品できず、そのまま引き取るしかない。
はじめに1400円払って10冊仕入れ、全部捌ければ1600円の利益が出るが
1冊も売れなければ1400円丸損となってしまう、なかなかキビしいビジネスモデルだ。
オジサンは話し相手がほしかったのか、いろいろこと細かに答えてくれたが
あまりにも僕が仕事の内容に興味を示し、しかも床屋行ってなくて頭がボサボサなもんだから、
てっきり僕を同業者か何かとカン違いしたらしく、
「アンタぐらいのトシだったら、もっとちゃんとした仕事探した方がいいヨ」
とあたたかいアドバイスまでくれた。いえ、単にホームレスを題材にした小説を書こうとしてるだけだったんですけど。
さて肝心の雑誌の中味なんですが、意外とホームレスや雇用関連の記事はそれほど見当たらず、
ごく普通の情報紙という印象であった。
今もあのおじさん、どこかの駅前でビッグイシューを手売りしてるんだろうか。取材に協力、ありがとうございました。