「エンタメ弱者」を救うには……。-sio_note-
テーマ▶映画
地元の市民会館で月に1度映画上映会をやっていて、すこし前に公開された作品が800円ほどで観られる。
おトクなので毎月のように、僕のオカン(70代後半)と一緒に行ってるのだが、
今回の映画、はたしてオカンは楽しめるだろうかと観る前にイチマツの不安があった。
作品は最初から最後まで舞台がほぼ一ヵ所に限定され、そこに手入りする人たちのやりとりのみで進んでいく、いわゆる「ワンシチュエーション・コメディ」というやつだ。
上映中、客席(年配者多し)はけっこうガッツンガッツン受けていて、僕もそれなりに楽しめたが、映画のあとオカンに感想を聞いてみたら、
「どこが面白いのか、さっぱり分からなかった」
という、なんとも情けないものであった。
うーん、そういうものか……。
僕はふと思いあたって尋ねてみた。「ずいぶん前に『有頂天ホテル』って
一緒に観たけど、あれも面白くなかったでしょ?」
「うん、全然つまらなかった。あれ以来、三谷幸喜が大嫌いになった」(三谷先生すいません)
ちなみにオカンの最近のベスト作品は山田洋次監督の『家族はつらいよ』だそうだ。こんどのパートⅢも楽しみにしているらしい。
なんとなくうちのオカンの趣味嗜好が分かっていただけたのではないだろうか。
まあ人によって好き嫌いがあるのは当然で、正直、僕だって心から良かったと思う作品には年に数回ぐらいしかブチ当たらないが、
自分好みじゃないなと思った作品でも別の観かたをしてみることで「それほど悪くもないな」と思えることもある。
当然だが、自分の好みじゃなくたってほかの人には直球ド真ん中ストライクってこともあるし。
でもうちのオカンみたいに、それほどマニアックに映画を見ない層にしてみれば、自分がつまらなかった映画=ダメな映画となってしまい、しだいに映画そのものへの興味を失っていくかもしれない。これはちょっともったいない。
PCやネットにうとい人たちは情報弱者、通称「情弱」などと呼ばれるが、
うちのオカンみたいな人たちは、自分好みのエンタメ以外は楽しめない「エンタメ弱者」ではないかとふと思いあたった。
僕のオカンをモデルにしてエンタメ弱者(エン弱)のポイントをいくつかあげてみよう。あくまで僕のオカン(70代後半)の場合である。
・ふだん、ほとんど地上波テレビしか見ない。
・とりあえず流行っているものにはとびつく。
・若い役者、新人の出る映画やドラマに抵抗がある。
・CGを受けつけない。
・血が流れるものや暴力シーンがダメ。
・外国の作品がダメ。
・タイムスリップものが理解できない。(ストーリーが時系列でないとダメ)
・役者本人と役柄のイメージをしばしば同一視してしまう。悪役をやってる俳優は本人も悪いひと、みたいに。
……などなど。
ひとくちにエンタメといってもいろんなタイプがある。限られたものしか受け入れられないのは、重ねていうが非常にもったいない。
よけいなお世話かもしれないが、自分の好みにばかりこだわらず、さまざまなエンタメを好きになってほしい。楽しいことが多いって素敵なことですから。